- 睡眠のメリットについて知りたい
- 起き続けるとどうなるか知りたい
- ほかの生き物の睡眠がどうなっているのか知りたい
今日は休みだったからって昼過ぎまで寝ちゃったよ。
寝すぎるのもよくないけど、しっかりと睡眠をとることはとても大事なことです。
でも、寝ている時間がもったいなくって・・・
いっそのことずっと起きていたほうがいいなって思うんだよ!
とはいえ、睡眠は生物が生きていくうえで欠かせない要素の一つですよ。
自然界だとわざわざ敵に襲われやすい状態になってまで眠らなきゃいけないなんて危なくない?
それでは一緒になぜ睡眠が必要か見ていきましょう。
- 睡眠そのものの必要性が知りたい
- 睡眠をとらないとどうなるのか知りたい
- 自然界ではどういう睡眠のとり方があるのか知りたい
- 睡眠には心身に大きなメリットを与える
- 人間が睡眠を11日間ものあいだ断った研究があった
- 睡眠を断つことで人体に様々な症状が出る
- 人間以外の動物にも睡眠が必要
- 工夫して睡眠をとる動物もいる
なぜ睡眠が必要なの?
睡眠には心身の健康を促進、維持する効果がいくつも備わっています。それだけにとどまらず、学習面においても重要な働きをします。
体の疲れを癒すため
睡眠の効果といわれる中で一番想像しやすいのが体の疲労回復効果でしょう。日中は筋肉や臓器が活発に活動しており、疲労やダメージが蓄積されていきます。しかし、深い睡眠(ノンレム睡眠)のときに体は回復するための成長ホルモンを放出します。これにより、細胞や組織が修復され疲労回復につながるのです。
脳を休めるため
人間が起きて活動しているとき、自律神経に大きな負荷がかかっています。この時、活性酸素が大量に発生して、自立神経の神経細胞を錆びつかせてしまい、自律神経の機能を低下させます。これが、いわゆる疲労の根本的な原因なのです。
そこで、睡眠をとって脳を休めることによりダメージを修復できるのです。自律神経の乱れも修正されるため、脳の機能も回復します。
記憶の整理し、定着させるため
睡眠の大事な効果の一つに学習効果があります。睡眠は記憶の定着を助ける働きがあり、きちんと睡眠時間を確保することで新しい情報を長期記憶として保存することができます。日中に怖い体験をしたときに夜、眠れなくなる等いう経験をしたことがある人もいるでしょう。これは、記憶が睡眠によって定着してしまい、トラウマとなってしまうのを防ぐためともいわれています。
また、不要な情報の削除も行われます。不要な情報や不要な接続を削除することで、記憶の混乱を防ぎ、記憶の効率的な保持を促進します。
記憶を整理するにはまとまった睡眠が必要であり、その長さは6時間から7時間半と言われています。睡眠が短すぎることでせっかく学習したことが定着しなかったり、嫌な出来事を忘れる前に起きたりということが起こってしまいます。
免疫力を高めるため
十分な睡眠がとれていないとホルモンのバランスが崩れてしまい免疫力の低下につながります。また睡眠不足は、免疫細胞であるT細胞やナチュラルキラー細胞の活性を低下させることがあります。
眠り始めのノンレム睡眠では、成長ホルモンが多く分泌されます。この成長ホルモンが日中の活動で疲労した免疫力を回復・増強します。
ストレスを軽減するため
ストレスは交感神経を刺激し、体内のストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を増加させます。コルチゾールは覚醒作用を持っており、過度に分泌されると睡眠を妨げたり、過剰な不安感に襲われたりすることがあります。また、ストレスによって、寝付きが悪くなったり、途中で目が覚めたりすることも。
十分な睡眠はこれらのストレスや不安感を抑制してくれるため、精神を安定させるためにも睡眠は不可欠です。
肌をキレイに保つため
睡眠中に分泌される成長ホルモンは肌質にもよい影響を与えます。成長ホルモンは肌のターンオーバー(新陳代謝)を促進することで、日焼けした肌や荒れた肌を落として新しい表皮にすることを助けます。
反対に、睡眠が不足していると以下のような肌トラブルが起こる恐れもあります。
- しわ、たるみ
- くすみ
- ニキビ
成長ホルモンは肌細胞の再生や修復が行われますが、睡眠不足の状態が続くとこのプロセスが十分に行われません。すると、肌のハリや弾力が低下して、しわやたるみが目立つようになります。
睡眠不足は、ストレスを増大させることがあります。ストレスが増大すると、ホルモンバランスが崩れ、皮脂の分泌が増加し、ニキビや吹き出物ができやすくなることがあります。
若々しいお肌を維持するためにも睡眠は必要不可欠です。
太りにくい体づくりをサポートするため
睡眠不足は食欲を増進するグレリンというホルモンを増加させ、食欲を抑制するレプチンというホルモンが減少します。そのため、十分な睡眠をとらないだけで食事量が増加してしまうのです。
また、睡眠不足の状態だと、日中の活動量やパフォーマンスが低下してしまいます。すると、代謝も落ちて消費カロリーが減少することになります。
食事量が増えているのに代謝は落ち、消費カロリーも減少する。このような状態では太るのはもはや避けられないでしょう。
太りすぎは糖尿病とか生活習慣病にもつながるし今日からでも睡眠はきちんととらなきゃ・・・
睡眠の仕組みはまだ完全には解明されていない・・・
実は、なぜ睡眠が必要なのかという詳しい原因については解明されていません。しかし、我々人類は一日の3分の1も気を失ってしまう不思議な現象について研究をしてきました。
古くは古代エジプトのパピルスに睡眠に関しての記述がありました。これ以降も様々な医学書に睡眠に関して言及してはいますが、睡眠の効果やメカニズムについて科学的な研究が進むのは最近になってのことです。
睡眠不足が引き起こすリスク
人間は一切眠らずに起きているとどうなってしまうのか、とても興味深い内容を研究した実験があります。
1964年、アメリカの高校生ランディは学校の科学プロジェクトの一環で眠らずに過ごすとどうなるのか、という実験をしました。当時は断眠による悪影響についてはほとんど知られていなかったため、この危険な実験が行われました。最終的には睡眠科学の研究者であるデメント教授による支援や海軍施設での脳波の監視の下で行われました。記録としては264時間起き続け、当時のギネス記録にも認定されました(現在は断眠の危険性から新しい記録は認められない)。
以下に示すように、実験が進んでいくにつれてランディーには様々な症状がみられました。
- 1、2日:眠気や倦怠感
- 3日目:認知機能の低下
- 4日目:妄想、幻覚
- 6日目:運動機能の低下
- 8日目:発音が不明瞭に
- 9日目:思考が断片的に
- 11日目:記憶障害
ランディは3日目には横断歩道の信号を間違えるほどに認知機能が低下しました。4日目になるとランディは自身がプロのアメフト選手だという妄想をするようになります。
さらに、6日目になると筋肉のコントロールが上手にできなくなります。また、100から7を引き続けるテストを行うと、途中で自分が何をしてるのかすら忘れるように。
7日目からはろれつが回らなくなり始め、8日目には発音が不明瞭に、9日目には思考すら途切れ途切れになり文を最後まで話せなくなりました。
最終的に、12日目にランディは14時間ぶっ通しで眠り続け完全に回復したようです。しかし、後年になってランディは後遺症があったとも述べています。
断眠は大変危険なのでくれぐれも真似はしないでください。
眠らないように見える生物たちの秘密
人間は睡眠が不可欠であるということは上で述べた通り明らかですが、人間以外の生物の中には睡眠が必要のない種もいるのでしょうか?
結論から言うと、人間以外の生き物にも睡眠は必要です。しかし、自然界では眠ることで無防備になるため、外敵に襲われるリスクが圧倒的に高くなります。そのため、様々な生物が進化の過程で独自の睡眠方法を獲得してきました。その一部ははたから見ると睡眠が必要でないように見えますが、工夫して睡眠をとっているにすぎないのです。
泳ぎ続けるイルカの「半球睡眠」
イルカは眠っている間も常に泳ぎ続けています。片側の脳を休めつつもう片方の脳を活動させることで、水中での睡眠を実現しています。これを半球睡眠といいます。
半球睡眠中は、イルカは片目が閉じ、脳の半分が休息します。もう片方の目は開いたままで、反対側の脳半球が意識を保ち、呼吸をコントロールしたり、周囲の状況を監視したりします。2時間ほど経つと、眠っていたほうの脳が起きて意識を保ち、起きていたほうの脳を休めます。半球睡眠をしているとき、通常イルカは複数でゆったりと泳いでいます。
イルカは、半球睡眠をすることで、常に警戒を怠らず、危険を回避することができます。
空を飛び続ける鳥の驚くべき睡眠方法
時には数週間、数か月間も飛行を続ける鳥たちはいかにして睡眠をとっているのでしょうか。
グンカンドリは、ガラパゴス諸島などにすむ鳥で時には獲物を追って数週間も飛び続けるため、睡眠は飛行中に行われます。グンカンドリは日が沈むと積極的に獲物探さず、滑空するようになります。この時、飛行中にイルカのような半球睡眠に近い状態で飛んでいることもありますが、両方の脳が同時に睡眠をとっていることもあります。
とはいえ、飛行時のグンカンドリの睡眠時間は極端に短く、熟睡中も飛行姿勢はほとんど変わらないため墜落することはないのです。